夏に愛されているこの島に、僕は居る。
「Do you have any vacancy? I'd like to Check in.」
「Ok.」
7万ルピアを恰幅の良い男に支払い、3号室の扉を開ける。
と、目に飛び込んできたのは『ベージュ色の独房』だった。
流石は一泊700円、といったところか。
内装は非常に簡素なもので、素っ頓狂なシャワーノズルからは水しか出ない。
「まあ、仕方ないか。」
バリでなら囚人生活も悪くないだろう。
そう自分に言い聞かせたところで違和感に気が付いた。
『独房』に満ちる不穏な空気に。
久しぶりに味わう緊張感。身体がしなやかさを失っていく。
「……いる。」
自ずと生唾を呑み込んだ。
白いタイルに汗が滴る。
「やあ。お待ちかね。」
絶望、という二文字がちらつく。
思考が感覚に追い付かない。
奴はこちらに気付いているようだった。
黒く光るその肢体。洗練されたケバケバしさは種の頂点を連想させる。
恐竜のいた時代から生き延びているというのは本当らしい…
身体は依然として硬直している。
流れ落ちる冷や汗だけが、時の経過を感じさせる。
畏怖。まさにそのものであった。
恐怖を具現化すると、ああいった形状に収斂するのだろう。
(逃げろ!)そういう類いの電気信号で神経が渋滞している。
「早くどうにかしないと…!」
黄色いスニーカーを片手に、滾るアドレナリンに身を委ねた。
そうした。というより、そうするより他に手が無かったからだ。
図示しちゃった。てへぺろ。 |
「……っ!!」
繰り返す無駄の無い無駄な動き。
繰り返す無駄の無い無駄な動き。
運動量では勝っている。
がらんどうな空間に響き渡るは靴の擦れる音のみだ。
明らかな消耗戦であった。
このままだと…マズい!
その刹那、脳裏に浮かぶ 柳生石舟齋先生の言葉。
「目を閉じよ。どうじゃ。お前は無限だろう?」
そうでしたね師匠。貴方の教えに従います…!
目を開くと、奴はこっちに向かっていた。
その小さな身体を駆使して宙を舞っていたのだ。
その刹那を。まばたきの瞬間を奴は狙っていたらしい。
…君は、完璧な放物線を見たことがあるだろうか?
僕はその時、初めて見たんだ。
思わず魅了されてしまった。美は時にヒトの魂を揺さぶる。
まさに遊覧飛行。
艶やかで優美なそれは、世にも残酷な「そらをとぶ」だった…
…
…
…
…そこから先は何も覚えていない。
目が覚めると知らない天井がそこにはあった。
高い天井に物憂げな電球がぽつり。
薄汚れたシーツの上で仰向けになっている。
誰かが別の部屋のベッドまで運んでくれたらしい。
今、僕はその天井を見つめたまま、PCでこいつを綴っている。
はい、せーのっ!
どんな姿勢っ!!?
おすまい。
2 件のコメント:
へいへい、ギリ島 って行くのかな?
俺のすげーいってみたい場所なんよ!
ギリ島めっちゃ良いとこですね!!
予定が一つ増えました。笑
フィールドワークしてきます!
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